素材の声を聞くお菓子づくり—白神のロールケーキが生まれる場所
秋田・白神山地のふもとで、家族が大切に作り続けてきたロールケーキがあります。地元産あきたこまちの米粉、鶴形のそば粉、自家栽培のブラックベリー —素材の力を100%引き出したやさしい甘さは、贈り物にも自分へのご褒美にもぴったり。通販でお取り寄せできる<エスポワール>の物語をご紹介します。 菓子工房エスポワール菊地隆宏さんにお話をお伺いしました。
地元素材を100%使用したロールケーキ
第1章:「地元に何ができるか」から始まった家族の挑戦
白神山地のふもと、藤里町の自然とともに歩む
エスポワール
秋田県・藤里町。世界自然遺産・白神山地のふもとに工房を構える<エスポワール>の始まりは、2009年11月にさかのぼります。
創業のきっかけは、「地元に何ができるだろうか」という想いでした。藤里町出身で地元愛の強い父は、転勤を重ねながら各地で働いたのち、定年後はふるさとに恩返しをしたいと考えます。料理が好きだった母とともに立ち上げたのが、この小さな菓子工房でした。
当初は夫婦二人三脚。製造から経理、営業までほぼすべてを担い、地域に根ざしたお菓子づくりを続けてきました。地元の素材を使い、自分たちの手で作り、お客様に届ける。シンプルですが、その積み重ねが少しずつ信頼を育んでいきます。
転機が訪れたのは2017年。父が亡くなり、母が代表として工房を守ることになりました。その後2021年、東京で働いていた息子がUターンし、さらに弟も加わり、家族経営としての新たな体制が整います。
「実際にやってみたらいいじゃないか」
外から見ていたときには分からなかった、ものづくりの面白さとやりがい。家族の背中を間近で見たことで、その想いは確かなものになりました。
菓子工房エスポワール 菊池隆宏さん
それまで母が一人で担っていた製造や運営も、役割分担が進み、体制は大きく変化します。製造を担う弟、営業や企画を担う兄。それぞれの経験が重なり、工房は少しずつ進化していきました。
創業当初、母は「70歳を一区切りに、この工房をどう閉じるか」を考えていたといいます。けれど今は違います。子どもたちが加わったことで、ブランドは“終わらせる場所”から“未来へつなぐ場所”へと変わりました。
家族で働くということ。それはときに遠慮もあり、昔と同じように“伺い”を立てる場面もあるそうです。それでも、肯定的に背中を押し合える関係だからこそ、続けてこられた16年。
<エスポワール>という名前には、「希望」という意味が込められています。地元への希望、家族への希望、そして手に取る人のひとときへの希望。
その物語は、ロールケーキのやさしい甘さとともに、今日も静かに続いています。
第2章:素材の声を聞く——米粉・そば粉100%へのこだわり
秋田県産あきたこまちの米粉や鶴形そば粉など、
地元素材を100%使用
<エスポワール>のロールケーキづくりの軸にあるのは、「地元の素材を使う」という揺るぎない想いです。
主力商品である白神こめっこロールには、秋田県産あきたこまちの米粉を100%使用。小麦粉は使いません。グルテンフリーを目的に始めたわけではなく、地元にある誇れる素材を選んだ結果が、米粉だったのです。
米粉のロールケーキと聞くと、「もちもちした食感なのでは?」と想像する方も多いかもしれません。しかし実際に食べたお客様からは「小麦粉みたい」「想像以上にふんわりしている」といった声が寄せられるそう。
グルテンがない米粉で“スポンジらしいスポンジ”を作ることは、決して簡単ではありませんでした。
開発当初は、専門家に相談しながら試作を重ねる日々。しかも目指したのは、米粉100%。つなぎに小麦を加える選択肢もあった中で、「地元素材で完結させたい」という意思を貫きました。
そば粉のロールケーキも同様です。使用しているのは、秋田県能代市・鶴形地区のそば粉。風味の強さ、粒度の違いなどを何度も検証し、現在の配合にたどり着きました。最近では、クリームに砕いたそば茶を織り交ぜるなど、香りの余韻を楽しめる工夫も加えています。
さらに、自家栽培しているブラックベリーもブランドの象徴的存在。約1,200株を自然農法で育て、年間300キロ前後を収穫。酸味の効いた白神ブラックベリーロールは、甘さ控えめの生地と好相性です。
「感覚だけでなく、ロジックも大事にしたい」
東京での経験を経て戻った息子は、砂糖の種類や分量、保存性への影響まで細かく検証。上白糖からグラニュー糖へ、そして甘さを抑えた現在の配合へと、少しずつブラッシュアップを重ねてきました。
“母の経験”と“息子の科学”。
その融合が、今の味を支えています。
素材をただ使うのではなく、その特性を理解し、引き出す。
だからこそ、ロールケーキは派手ではなくとも、じんわりと心に残る味わいになるのです。
第3章:贈り物として選ばれる理由——地域とつながるロールケーキ
贈り物にも選ばれるロールケーキ。
地域イベントや学校との連携も続いている
<エスポワール>がロールケーキを主軸に据えているのは、素材の個性をもっとも美しく伝えられる形だからです。
くるりと巻かれた生地の断面には、その土地の色と香りがそのまま表れます。
あきたこまちの米粉なら、やわらかく澄んだ生地の表情。
鶴形のそば粉なら、ほんのりとした香ばしさを感じる色合い。
自家栽培のブラックベリーなら、鮮やかな紫のコントラスト。
切り分けた瞬間に広がる断面の美しさは、贈り物としての特別感をさりげなく演出します。
華やかでありながら、どこか素朴であたたかい。その佇まいが、「センスのいいギフト」として支持されている理由のひとつです。
実際にお客様からは、
「これを買いに来たんです」
「家族がこのロールケーキのファンなんです」
そんな声が届きます。
通販で取り寄せ、冷凍で届くロールケーキ。
解凍時間は約120分(カットの場合)。その“待つ時間”さえも、楽しみの一部です。少しだけ半解凍でアイスのように。しっかり解凍して、しっとりと。食べる人の好みに合わせて表情を変えてくれます。
また、<エスポワール>のロールケーキは、地域とのつながりの中でも育まれてきました。地元の小中一貫校・藤里学園や商業高校と連携し、生徒とともに商品開発を行う取り組みも続いています。
「この素材で何を作りたいか」
「どうすればもっと良くなるか」
何度も試作と対話を重ねて生まれたロールケーキを、生徒自身が売り子として販売する。
自分たちのアイデアが形になり、お客様の「おいしい」に触れる経験は、かけがえのない学びとなっています。
ロールケーキは、単なるスイーツではありません。
人の想いを包み込み、地域と未来をつなぐ存在でもあるのです。
贈り物として選ばれるのは、味だけではなく、その背景にある物語が伝わるから。
箱を開けた瞬間、そこにあるのは、素材と家族と地域が重なり合ったひとつのストーリーです。
第4章:家族で描くこれから——挑戦とやさしい未来像
家族で支え合いながら、素材と向き合う日々。
(左から)菊地康朗さん、菊地整さん、菊地隆宏さん
2021年、東京で働いていた息子が戻り、弟も加わり、家族経営として新たな一歩を踏み出した<エスポワール>。
「やろうと思ったら、すぐ動ける」
組織の中で働いていた頃とは違い、自分たちの判断で挑戦できる環境。そこには責任も伴いますが、同時に自由もあります。
一方で、軸は変わりません。
地元の素材を使い、素材の声を聞きながら作ること。
現在も、自家栽培のブラックベリーを約1,200株育てながら、新しい素材との組み合わせにも挑戦を続けています。秋田県内に限らず、声があればどんな素材とも向き合ってみたい。
米粉とそば粉という確かなアイデンティティがあるからこそ、可能性は広がります。
「買ってくださったお客様が、ほっと一息つける存在でありたい」
華やかさよりも、安心感。
派手さよりも、やさしさ。
ロールケーキを囲む時間が、誰かの大切なひとときになりますように。そんな想像を重ねながら、日々オーブンに向かっています。
創業から16年。
無我夢中で走り続けてきた時間の中には、困難もありました。それでも続けてこられたのは、家族がそばにいたから。そして、足を運び続けてくれるお客様がいたからです。
「地域に貢献できていたらうれしい」
その言葉は、創業当初よりも今のほうが、いっそう強くなっています。
子どもたちへ、地域へ、未来へ。希望という名前のブランドは、これからもやさしく、確かに歩み続けます。
秋田の自然と家族の想いを巻き込んだロールケーキ。
それは、誰かの一日を少しだけやさしくする贈り物です。
自分へのご褒美に。
大切な人へのプレゼントに。
白神山地のふもとから届く、あたたかな甘さを、ぜひ一度味わってみてください。
<菓子工房エスポワール / espoir>花とスイーツの贈り物 体を想う大人のための米粉と蕎麦粉のロールケーキセット
¥ 5,832(税込)