GIFT STORY
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誰かとの贈り物のループが繋がると、
選んで贈る過程自体が
自分へのギフトになる
ムードマークのラインナップから、誰かに贈りたいアイテムをクリエーターにセレクトしてもらい、ギフトについて思いを巡らせ、可能性を広げていく連載「ギフトを届ける人」。最終回のゲストは、ダンサーのアオイヤマダさんです。無類の野菜好きが選ぶ、野菜愛のこもった贈り物について。そして手紙とともに贈り、贈られる相手との繋がりから起こる、ギフトの不思議を語ります。
消えもの、つまり食べ物のギフトに手紙を添えて贈る
誰かに贈り物をするなら、消えるギフト、いわゆる食べ物や飲み物を選びたい、と話すアオイヤマダさん。
「形として残るものより、無くなるもののほうが気楽。目の前にあったものが消えてしまう、その儚さがいいなと思います。そして食べ物や飲み物は、贈った誰かの体内に入ってその人自身になるもの。だから特に慎重に選びたくなります」
その一例となるのが、手紙を書くのが好きなアオイさんが、愛知県にある料理屋の80代の女将さんと交わしている文通。
「手紙の内容は本当に日常の些細なことばかり。でも、手紙だけだと気持ちが伝わらないかも、と感じたときに、赴いた先で買ってきたものとか、何かと一緒に送ります。たとえば、ちょっと風邪気味で、というような手紙が来たときは、ハチミツを贈る。するとおばあちゃんからの返信に、ユーカリのお茶の葉が同封されている。そういう、お互いの今の状態に合ったものや、旬のものをやり取りするのが好きですね」
長野県松本市から上京したのは15歳のとき。慣れない東京での暮らしをサポートするため、ときどき母親から食材が送られてきましたが、そこには必ず手紙が添えられていました。食べ物と手紙という組み合わせが自分の中にインプットされたのは、その影響なのかもしれません。
「何かを贈るときは、もちろん相手の状況を考えますが、それに合わせるというよりも、状況と贈りたいお気に入りのものとが一致した、まるで点と点が繋がったように感じたときに贈ることが多い気がします」
地元に住んでいるカレー好きな祖父母に
祖父母がカレーにハマっていることを知ったとき、早速自分の好きなカレーを贈りたくて選んだのが、ニシキヤ キッチンの素材を味わうカレーセット。
「二人が白いご飯にレトルトカレーをかけてお昼によく食べていると聞いて、ときには違う味を食べたくなるかもと、ふと思いつきました。このカレーはいつも行くスーパーマーケットに売っているんです。パッケージの色遣いが可愛いと思っていて、買って食べてみたらおいしかった。それで選びました」
4つの味が2袋ずつ入っている合計8個のセット。どの味も化学調味料や着色料、香料を使用していません。
「自然の素材に惹かれていて、普段食べるものも添加物などに気をつけています。でも、時折遊びがほしいときもありますね。レトルトのものや加工品が全部ダメというわけではなく、素材の背景や、どういう意図で作られているかを知ると、『それはいいな』と思うことも。だから、あまり神経質にならないように選んでいます」
ニシキヤ キッチン/NISHIKIYA KITCHEN 素材を味わうカレーセット 4,158円(税込)
カレー、パスタソースなど、世界の料理から約100種類のレトルト食品を販売している専門ブランド。カレーは、トマトの酸味が食欲をそそる辛口の「トマトビーフカレー」、ゴルゴンゾーラチーズのコクが生きる中辛の「ゴルゴンゾーラビーフカレー」、爽やかなレモンと生クリームを合わせた甘口の「レモンクリームチキンカレー」、白ワインビネガーとカルダモンが香る中辛の「ビネガーポークカレー」の4種類。
クルックフィールズでできたおいしい素材
体に取り入れるのは、できるだけ自然からの恵みにしたい。そう考えているから、クルックフィールズの旬の野菜6種セットもリストアップ。
「以前、千葉県木更津市にあるクルックフィールズを訪れました。パフォーマンスをしたこともあって、いろいろなお付き合いをしています。ここはすごく広い敷地内に畑やレストランがあって、環境や資源に対する取り組みが行われているんです。野菜や、そこで育成されている牛から作られた乳製品を食べたのですが、すごくおいしかった。そういう地球環境にやさしい場所で作られたものなら、誰かに贈りたくなります」
クルックフィールズは農業と食、アートをテーマにしているサステイナブルな施設。農業が行われ、微生物や植物の浄化作用を生かした循環型濾過措置を取り入れています。
「人が食べ物を作り、作った人と関わりのある自分がいて、それを今度は第三者に届けたくなる。このギフトは旬の野菜、つまりそのときの一番おいしいものが届く、わくわくする贈り物。たくさんの人に知ってもらいたいです」
クルックフィールズ/KURKKU FIELDS クルックフィールズの旬の野菜6種セット 3,456円(税込)
人間も自然の循環の一部と考えてサステナブルな未来に目を向けるクルックフィールズで、有機栽培の作物を身近に感じてもらおうと始まった農業。そこで育てられたオーガニックの採れたて野菜が、直送で届けられます。若手農家が土作りから始めて、現在ではすべての畑で有機JAS認証を取得。その季節に収穫された旬の味を楽しめます。
好きが高じて、畑で踊ったり野菜と組んだり
そもそも野菜への愛が相当に深いアオイさん。自身の結婚式でもテーブルセッティングの花をすべて野菜にして、そのままゲストに持ち帰ってもらったほどの、筋金入りの野菜好き。コロナ禍で地元に帰れず、なかなか家族にも会えない時間が続きましたが、その間に実家から送られてきた野菜と、歌謡曲で踊る動画が話題になりました。先日もクルックフィールズのケール畑で踊ったと言います。
「野菜好きになったのは、上京後にあまり食べ物に気を配っていなかった結果、体調を崩してしまったことから。何かを変えないといけないと考えて、体は食べたものでできている、という当たり前のことに気づいたんです」
そこから食に携わる職業に興味が湧いて、料理教室に住み込みで働けることになり、ダンスをしながらケータリングの仕事をしていました。偶然そこの常連の人がダンスのできる人を探していて、それが今の活動に繋がっていったと言います。体と向き合うところから野菜との付き合いは始まっていて、それが今に至る活動にも全部影響しているのです。
「野菜は偉大。地元の畑やクルックフィールズで野菜を育てている現場や人を見ると、大変さが伝わるし、自分には絶対にできない。だから農業に従事する人たちへのリスペクトは常に感じています」
そこで働く人、作る人への強いリスペクト
もう一つ、クルックフィールズのアイテムでアオイさんが選んだのは、ジビエのシャルキュトリー。シャルキュトリーとはフランス語で食肉加工品のこと。クルックフィールズの近隣地域の人たちと連携して、山や森で駆除された鹿や猪を処理し、施設内でハーブなどとともにソーセージやハムに加工。それが届けられるギフトです。
「園内で働いている人たちは、仕事という義務的な雰囲気ではなく、好きでやっておられるんだなというのが伝わってくる。そこに感動します。地元に戻ったときに畑のお手伝いにも行きますが、食べ物を育てるのは本当にすごいことだから、手伝うたびにこちらも初心に帰ります。そういう人の作ったものを食べるのはとても嬉しい。だから、贈る相手にも食べてほしいんです」
クルックフィールズ/KURKKU FIELDS 豚とジビエの自家製シャルキュトリーおつまみセット 5,616円(税込)
シャルキュティエ(食肉加工職人)が、千葉県産の豚肉、猪や鹿などのジビエ肉を丁寧に精肉し、野菜やハーブなどを組み合わせたソーセージやテリーヌなどのギフトセット。「ジビエテリーヌ」、「豚ロースハム」、「猪ビアブルスト」、「豚野菜ソーセージ」、「猪野菜ソーセージ」「豚テキサスBBQ 」の6種類のシャルキュトリーと、キャロットラぺ、ピクルス、オリーブとドライトマトのマリネの3種類のピクルス・マリネを詰め合わせ。
マネジャーの誕生日にプレゼントするのはハチミツ
疲れたときに口にするとしっかり回復する気がして、体調管理のために手放せないのがハチミツです。
「幼い頃に唇が荒れているとき、母がハチミツを唇に塗ってラップで保護してくれました。そこからハチミツ好きが始まっていた気がします。今ではマネジャーとお互いの誕生日には、毎年ハチミツを贈り合っています」
ハチミツはアカシアやクリなど植物によって味が異なるので、その違いを味わうのも楽しい。これは、ニュージーランドに自生しているマヌカの花から採れたもの。
「マヌカハニーはやや高級だから、自分のためにはなかなか買いづらいのですが、ギフトとなるとすぐにお財布が開くのが不思議です。人のためだとすぐに選べます」
料理教室の手伝いをしていたときに、その主宰の人が目の物もらいにマヌカハニーを塗っていて、その効果を教えてもらいましたが、アオイさんはそのまま食べる派です。
「母やマネジャーなど、やっぱり女性にあげたくなりますね」
エーエフシー/AFC マヌカヘルス マヌカハニーMGO 263 5,400円(税込)
ニュージーランドのマヌカから採蜜したハチミツをボトルに閉じ込めました。マヌカの採蜜可能な期間は1年のうち6週間と限られているので、とても貴重なもの。他のハチミツにはほとんど入っていない天然の成分「MGO(食物メチルグリオキサール)」が含まれていて、263という数値は、1kgあたりに263mg以上のMGOが入っていることを表しています。
キャンプが好きな両親にプレゼントしたい
グッドネイチャーマーケットのカカオカレーをセレクトしたのは、京都にあるグッドネイチャーホテルの朝ごはんが大好きだったことから。
「京都に行くと、一度はこのホテルのレストランで朝ごはんを食べます。有機野菜を使った料理で、おいしいのはもちろんなのですが、お皿や盛り付け方も興味深いんです」
レトルトカレーはまだ食べたことはないけれど、朝ごはんがこれほどの美味であればカレーもおいしいはず。素材を生かし、カカオを隠し味に使ったコクとうまみが感じられる6種類のセットです。
「パッケージの色がいいですよね。これも祖父母に加えて、よくキャンプをしているアウトドア好きの両親にも贈りたい。外で食べるカレーはまた別のおいしさがあると思うので」
グッドネイチャーマーケット/GOOD NATURE MARKET GOOD CACAO カカオカレー6点セット 4,968円(税込)
隠し味にカカオを使ったレトルトカレー。GOOD NATURE STATIONのスイーツラボブランド、RAUのシェフショコラティエールがコスタリカの農園まで足を運び、栽培、乾燥、発酵まで監修したオリジナルカカオを使用しています。「たっぷりトマトとゴルゴンゾーラの濃厚ビーフカレー」、「とうもろこしのまろやかカカオカレー」、「ピスタチオ&瀬戸内レモンのマッサマンカレー」、「お出汁のうま味たっぷり和風キーマカレー」、「花椒と山椒がしびれる旨辛麻辣カレー」、「スパイス&ハーブでおからが絶品薬膳スパイスカレー」の6種類。
魚釣り体験から伝わった、命をもらうことへの実感
「会社員の夫のために毎朝起きてお弁当を作ります。ときどき焼き魚をおかずに入れますが、干物はとても手軽。焼き立てだとすぐお弁当箱に入れられないので、先に焼いて冷ましておきます」と話すアオイさんが選んだのは、金目鯛の干物をハーブとガーリックで下拵えし、南フランス風に仕上げた2匹入りのセット。弁当のおかずとして、肉に比べて焼き魚はなかなかハードルが高い。けれど、このセットならすでに下味がついていて、焼くだけでOKだからとても簡単。
「2年ほど前、友達に誘われて漁船で魚釣りをしたことがあります。偶然にもワラサという、ブリになる前の魚が釣れましたが、そのときの重さや血の量に衝撃を受けて、魚も一つの命なんだと強く実感したんです。その後、乗っていた人たち皆で調理して食べましたが、それがとてもおいしく、魚が好きになりました」
撮影の際にアオイさんが用意してくれた大皿は、昔リサイクルショップで見つけたものですが、まるであつらえたかのようにこの魚にフィット。
「私の周囲の人々はほとんどが肉好き。たぶん魚は肉よりも高価で扱いにくいイメージを持っていると思うので、魚を敬遠している友達にプレゼントしたいです」
アタラシイヒモノ/Atarashii Himono 金目鯛2個入りセット 5,400円(税込)
丸ごとの金目鯛の干物が2つパックされた贅沢なギフト。ハーブやガーリックで下拵えしてあるので、フライパンやオーブンで簡単に調理できます。「アタラシイヒモノ」は、江戸時代に登場した日本の伝統食である“干物”を、幅広い現代のライフスタイルに合わせて、フレンチの技法で開発するブランドです。
贈り物をもらったら、自然とお返しがしたくなる
思い出に残るギフトは、まだ結婚していなかった現在の夫から20歳のお祝いで贈られた20本のバラ。予告なく宅配便で届き、とても驚いた記憶があります。
「お花のギフトといえば、先ほどお話しした文通相手の料理屋さんのおばあちゃんから、春にミモザをいただきました。おばあちゃんのギフトはきれいに装飾された箱でいただくこともあって、手紙とともにラッピングも楽しみにしています」
何かを贈ったりもらったりという行為に対して、アオイさんは負担に思うことなく、自然と湧いてきた感謝の気持ちにそのまま従っています。だからプレゼントをもらった後、今度は自分がいいものを見つけたら手紙とともに送ってみて、そのお礼がまたやってきて、と、ずっと繋がっていくと楽しいと言います。
「贈って、そしていただいて、というループが続くことを考えると、相手へのギフトだけれど、何を選ぼうと考えて贈る過程自体が、自分へのギフトになっている気がしてきます」
PROFILE
■アオイヤマダ
(Body artist)
2000年生まれ。
15歳で上京し90年代のクラブやアートシーンを起源とする東京のファッション界に出会い、影響を受ける。メディアアート集団ダムタイプ「2020」等に出演、東京オリンピック2020閉会式にソロ出演後、ヴィム・ヴェンダース映画「Perfect Days」、ファッション短編集「KAGUYA BY GUCCI」やNetflixシリーズ「First Love」に役者として出演。
Photo / Ayumi Yamamoto Text / Akane Watanuki Edit / Moe Nishiyama