岡山県|宇宙につながる酒造り。丸本酒造「EARTH SCIENCE」をギフトに
晴れの国と呼ばれる岡山のなかでも、とくにゆらぎのない空気に囲まれる竹林寺山。山頂に佇む天文台に見守られるように、竹林寺山の麓で酒造りと酒のための米作りを続けるのが、慶応3年から続く酒蔵<丸本酒造>です。自然の力と酒造りのつながりや、宇宙と縁の深いこの土地ならではの酒の魅力、そして人の魅力を感じる日本酒は、日常に少しの変化や幸せをもたらしてくれます。
INDEX
- 宇宙につながる酒造り
- 「EARTH SCIENCE」をギフトに
- 自然を慈しむ気持ちが有機農業につながる
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酒のための「米作り」そして「酒造り」
- 一口で幸せになる味を目指して
宇宙につながる酒造り
天体観測では空気の “ゆらぎ”が致命傷と言われており、台風や雨などが多い地域は天体観測には不向きと言われています。竹林寺山の上空は、気候に恵まれた岡山県のなかでも、とくに天体観測に適した“ゆらぎ”のない空気を纏っており、天体と縁の深い土地。竹林寺山の山頂には、日本最大級の反射望遠鏡を有する天文台があり、美しい星空や宇宙とのつながりを身近に感じることができます。
ちなみに “ゆらぎ” がない空とは、沖縄のような「澄んでいる」イメージとはまた違い、風がなく穏やかで「星がまたたかない」イメージだと言います。
天文学との縁は古く、竹林寺山のすぐ隣の阿部山は、平安時代に天文学に精通した陰陽師「安倍晴明」が、暦を作るため天体観測をした場所。阿部山の山頂にある「阿部神社」は、丸本酒造のある浅口市に何箇所かある、晴明ゆかりの地のひとつです。
1,000年以上も前から人々が宇宙に思いを馳せてきた土地で作られる酒は、確かな味わいはもちろんのこと、どこか神秘的な魅力も。天体現象が酒造り・米作りに影響することはもちろん、宇宙と縁の深いこの土地ならではの酒を通じて、自然の持つ力や美しさに改めて気づかされます。
「宇宙と言うと上を見上げるけれど、実は全方向が宇宙。目には見えないものも含めて、空間を超えてすべて繋がっている感覚です。そういう思いをとじ込めてつくったお酒を皆さんにお届けできれば。」とお話してくださったのは、六代目当主の丸本仁一郎さんです。
「EARTH SCIENCE」をギフトに
「EARTH SCIENCE」の大きな魅力のひとつは、手に取った人々が様々な角度から楽しむことができるエンターテイメント感。まず目に留めたくなるブルーのボックスには丸い穴が空いており、少し暗いところで光を当てると、地球と惑星のような球体が浮かび上がります。地球はボックスの内側に描かれたもので、惑星のような球体はボトルの中に入ったビー玉という遊び心。
さらにボックスの側面には、地球の公転速度や光の速度などについて記してあり「天体ファンからすると相当エキサイティングなんじゃないかな。」と丸本さん。宇宙と自分たちの位置関係を考えてみるも良し、“だから僕たちは今この空間に生きているんだな”と、エモーショナルな気分に浸るも良し、色んな角度から楽しむことができそうです。
天体ファンではなくても、誰しもが宇宙との繋がりを感じたり、宇宙のことを知った気分になれるような、そんな気持ちにさせてくれる「EARTH SCIENCE」。普段日本酒を飲まない方にとっても、新しい発見やきっかけを与えてくれるはずです。
相手に気遣いをさせない300mlという程よい量感も、贈り物にしたくなる魅力のひとつ。1人での晩酌タイムにはもちろん、誰かと宇宙を語りながら気軽に乾杯をする楽しい姿も目に浮かびます。宇宙を連想する凛としたデザインのパッケージは、星空の似合うクリスマスシーズンにも、夕暮れが美しい夏の季節にもマッチするので、時期を選ばずギフトシーンを盛り上げてくれそう。
自然を慈しむ気持ちが有機農業につながる
オーガニックの世界三大認証を取得する丸本酒造。欧州のオーガニック基準に関しては、日本酒として国内初。高いオーガニック基準を有する丸本酒造では、酒造りの工程で出る「酒粕」と「ぬか」を肥料にすることで、米作りと循環するシステムを取っています。酒粕とぬかを一定の比率で合成すると抜群に良い肥料になるのだそうで、酒蔵ならではの肥料を売って欲しいと言われることも。有機農業を実践する背景には、美しい自然と共に酒造りを続けてきた蔵元だからこその思いが感じられます。
「最近はだいぶ周知されてきましたが、消費者保護の法律に思われがちな“オーガニック”や“有機”の基準は、実際には環境保全の為の法律なんです。」と丸本さん。COP(気候変動枠組条約締約国会議 / Conference of Parties)の場で、地球環境に一番害を与えているのは何かと発表された際、大きな要因として上がったのが農業だったそう。
「実際には法律が変わっていったとしても、人々の精神性が鍛錬されないことには環境破壊も繰り返されてしまう。」という言葉の背景には、生きているものに対する慈愛や共感、そして自立した意識を持つことが大切だという思いが。「むずかしいことは言わず、自然に対する“美しいな”という気持ちがあって、それが侵されるのは誰だって気持ちの良いものではないはず。これに尽きると思います。」とお話してくださいました。
自然の恵みによって作られる日本酒は、自然の循環について考えるきっかけにも繋がっていきます。オーガニックの米(有機米)を使った日本酒は、日本国内を見てもまだ少ないのが現状ですが、東京のレストランでも注目が高まっていたり、これから需要が増えてくるのではないかとの事。また、最近法律が変わったことで丸本酒造の日本酒には「有機JASマーク」がつくように順次切り替わっています。オーガニック日本酒の“輪”が岡山から広がっていきそうです。
酒のための「米作り」そして「酒造り」
丸本酒造の米作り
「お米をちゃんと見定めることができないと、良いお酒を造ることはできない。」と丸本さんが言うように、酒蔵だからこそ出来る米作りを実践している丸本酒造。穀物検査による米の等級付は大きさなどによって決定するそうですが、米が溶けて酒になるため、酒造りにおいては米の成分内容がとても大切になってきます。
肥料・品種など様々な面において違うという通常の米作りと酒のための米作り。「タンパク質の量が多すぎると酒の“雑味”につながってしまうため、肥料の量を見極めることもポイントです。」と、営農部の遠藤直人さんが教えてくれました。酒を造る会社に“米のプロ”がいるのも、自社で米作りを行う丸本酒造ならでは。
美味しいお酒のための米作りを極めていくなかで、タンパク質や窒素など、酒米として良い成分のバランスをとるために採用しているのが「三黄作り」です。三黄作りは、稲を3度栄養不足の状態にした所に適切な量の肥料を与え、稲本来の潜在能力を引き出す農作方法のこと。
丸本酒造では、米の栽培年数を重ね、圃場の面積も年々増えてきたことにより、各田んぼごとの土壌データを大量に蓄積できているのだそう。このデータにより、ある程度どんなお米ができるか予測することができ、酒造りに最適な米を作ることが可能に。遠藤さんは新たに、近年注目されている「BLOF理論」を用いた科学的・論理的な有機栽培にも取り組んでおり、酒造りのための米作りは日々進化を続けています。
丸本酒造の酒造り
敷地内のほとんどの建物が、国の登録有形文化財に指定されている丸本酒造の蔵。文化財に指定されている蔵元は多いそうですが、現役で酒造りをしているのはめずらしいのだとか。国内でもなかなか見ないという、立派な梁にも圧倒されます。
中に入らせてもらうと、古い建物であるにも関わらずとても清潔感があり、手入れの行き届いた床や酒造りの道具には、自然を慈しむ気持ちに通じるものを感じます。雑菌の増加や洗浄レベルの低下によって酒の味にも影響してくることから、丸本酒造では掃除や整理整頓を徹底しているのだそう。
素材の良し悪しによって味の影響が大きいワインなどに比べて、酒造りは杜氏の腕によって味わいが変化することも特徴の一つ。前述した、タンパク質の含有量などによって変化するその年ごとの米を、杜氏の手によっていくつもの工程を重ねていき、美味しい酒が出来上がります。
オーガニックの米(有機米)でつくる酒は、比較的“固め”になることから、寝かせることも重要な工程のひとつ。味わった際に感じる柔らかさは、若干の寝かせによるものだそうです。
オーガニックの日本酒の魅力を楽しむ1本としておすすめなのは、自然のエネルギーで作られる米の力強さを感じながらも、柔らかい後味が楽しめる「かもみどり 純米吟醸オーガニック」。友人たちとの気軽なホームパーティーへの手土産にも最適で、ワインやシャンパンではない意外性と、オーガニックの日本酒という希少性で、楽しいひと時に新たな発見をもたらしてくれそうです。日本酒好きなお父さんへのプレゼントにも◎
一口で幸せになる味を目指して
最後に丸本さんが求める理想の酒は?と伺ったところ、返ってきたのは「一口で幸せになれる味です。」と、とてもシンプル。
「正しい英語かはさておき “Happy chain of business chain” つまり、お客さんはもちろん、流通に関わる人々、酒を造る人、米を作る人、みんながどこまで楽しんでいるか。幸せなところ、楽しそうなところに人々は集まっていくんですよ。」と柔らかな物腰でお話してくださいました。
岡山県から届く、ハッピーな輪を広げる日本酒を、大切な方の贈り物にセレクトしてみては?