

鋳型に溶かした金属を流し込む。単純なこの作業が、ごまかしの効かないものづくりの原点
<能作>では、高岡の地に伝わる鋳造技術を軸として、400年の歴史に培われた高度な加工技術が息づいています。伝統的な「生型鋳造法」や独自の「シリコン鋳型鋳造法」などを巧みに使い分ける大胆なアプローチが、<能作>の真髄。多くの製品で用いられる「生型鋳造法」は、鋳型用の砂に少量の水分と粘土を混ぜ、押し固めて成型する昔ながらの製法。鋳造前に鋳型を焼成・薬品処理しない点が他の鋳造法とは異なり、鋳型の製作が早く量産にも適しています。

着色、加工、研磨の工程を経て、職人の
手仕事から美しい日常品が生まれます
<能作>が誇る技術力は、「錫100%」素材を使うという、新しい美意識を生み出しました。通常、錫はアンチモニなどを混ぜて高度を増し、加工しやすくするのが鉄則。ところが、<能作>は高い技術力に裏打ちされた、逆転の発想とみずみずしい感性で「曲がる金属の持ち味を活かし、曲げて使う食器を作ろう」と試行錯誤を重ねていったのです。<能作>の代名詞となる、錫100%の"曲がる食器"が誕生しました。
錫100%の鋳物は手で曲がるほど柔らかく、表面に加工を施すことができません。そこで、あえて表面に加工を施すのではなく、錫そのものの質感をシンプルなフォルムで描ききるために、鋳造の精度を極限まで追求しました。こうして、脈々と培われてきた職人の技をさまざまな製品へと昇華させ、伝統の鋳物を身近に使う新たな楽しみを、多くの使い手に伝えています。そんな<能作>の試みは、100年後、200年後に「真の伝統品」と称されることでしょう。

製品の原型となるすべての木型が眠る倉庫。木型は代々受け継がれる職人の財産