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2020年12月11日
メスカル好きシェフが語る
メスカルの楽しみ方
渋谷PARCO内でモダンタイ料理レストラン「Chompoo(チョンプー)」のシェフを務める森枝幹さんと、三軒茶屋で話題のクリエイティブなタコス料理を提案するメキシコ出身のシェフ、マルコ・ガルシアさん。後編では、7年ほど前から交友を深め、メキシコも一緒に旅したという二人に、メスカルの魅力を語っていただきました。

メキシコでは、いつからメスカルブーム?
ガルシア「2013年から5年ぐらいメキシコに戻っていた時期があるんです。メスカルがメキシコで盛り上がってきたのは、その頃じゃないかな。元々地酒で田舎っぽいイメージの酒で、オアハカ州という限られた地域でしか飲まれていなかった。でも、世界的に大量生産や大量消費が疑問視されて、大手ではなく小規模の手作りや多様性が注目されるようになって、メスカルの原料となる様々なアガヴェの品種や伝統的な製法が再評価されるようになったのだの思う。それまでは田舎の年寄りが飲む酒だったのに、サブカルチャーを牽引する若者が注目しだした。僕の中では自然派ワインのブームと似たような動きと捉えています」

森枝「2017年にノーマ メキシコに行ったけれど、その時も食中酒で提供されていたし、ちょうど南米料理盛り上がってきた時で、話題のレストランではメスカルがオンリストされていたね」
ガルシア「その時はもう海外でメスカルが流行っていたね。でも、メキシコというとこれまではタコス・サボテン・プロレスのイメージしかなかったから、メスカルみたいな土地ごとに多様性のある食カルチャーが、海外で話題のバーなどで注目されるのは良いことだと思った」
どんな時、どんな風にメスカルを飲む?
ガルシア「昔は、昆虫の粉末と塩と唐辛子をミックスしたものをつまんでメスカル飲んで、オレンジを囓ってまた飲む、みたいなスタイルだったんだよね。それがブームになってからはお洒落なカクテルで提案されるようになった。グローバルなバーシーンでブームに火がついたけれど、お酒そのものが複雑な味わいで奥行きがあるから、内心はカクテルじゃなくていいんだけどなあって思います。個人的にはストレートで味わってほしい。香りを楽しむお酒なので、ショットグラスで一気に飲むよりは、日本酒のおちょこみたいな器で、少しずつ飲むといい。伝統的なメスカルの酒器って日本酒のおちょこに形もサイズも似てるんですよ」

森枝「メスカルは、僕はパチンって開く感じが気持ちいい酒だと思っています。色々な蒸留酒があるけれど、気分が上がってアッパーな酒って言われるのがよくわかる。悪酔いもしないしね。お酒って内省的になるものが多いと思っているんだけれど、メスカルは圧倒的に外向き、オープンになる酒だなあと」

ガルシア「僕にとっては、1日の終わりにお疲れ様って癒される存在。香水を嗅ぐ感覚で、香りを嗅ぐだけで気分がいい。日本で毎日飲んでます。仕事の後にこの香りを嗅ぐと、元気が出るんだよね」
森枝「食事と合わせるならハイボールとかが合いやすいかもしれないね。僕が料理を提案する場合、辛味とハーブや柑橘のフレッシュ感を入れるとメスカルに合いやすいと思ってる。マルコの店でもメスカルを出しているんだよね」
ガルシア「うちの店では日本人のお客さんで朝からタコスとメスカルという人もいるよ。メスカルは香りが独特でパンチがあるから、揚げ物とかも合うと思う」
メスカルの未来を考える
ガルシア「気になるのは、種の保存やサスティナビリティのこと。人気になりすぎて需要過多になると、原材料不足になるし、価格も上がる。アガヴェは野生種のアガヴェは特定の標高など生息地域が限られているも。品種は豊富にあったとしても、育つ環境が限られているから責任のある使い方をしないとその品種が絶滅してしまう恐れがある。ロス・ダンサンテスは、本格的なアガヴェの研究機関を立ち上げ、様々な品種の繁殖方法や栽培方法を解明して環境課題に取り組んだり、どんな品種のアガヴェであっても野生から収穫しないで栽培するというポリシーを持っていたり、サステナビリティに真剣に取り組んでいると思う。今のメスカルブームの流れは嬉しいことだけれど、これが定着する食文化になっていくことを願っているよ」
森枝「僕もまだまだメスカルは研究中なので、今後も色々教えてね」
メスカルは、日本で体験できる店はまだまだ限られていますが、興味を持ったら家飲みという方法も。森枝シェフ提案の簡単つまみで合わせてみるのもよいし、マルコシェフのおすすめするように、まずはその個性的な香りを純粋に楽しむもよし。きっと新しい食文化の扉が開くはずです。
writing:Kaori Shibata

