GIFT STORY
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2021年2月9日
ギフトを届ける人 vol.1
たかはしよしこさん/前田景さん
ギフトは誰かのために
料理をするのと似ている。
ムードマークのラインナップから、誰かに贈りたいアイテムをクリエイターにセレクトしてもらい、ギフトについて思いを巡らせ、可能性を広げていく連載「ギフトを届ける人」。第1回目のゲストは、昨春に東京から北海道の美瑛町へ移住した、料理家のたかはしよしこさんとアートディレクターの前田景さん。移り住んだ広大な敷地には、もともと前田さんの祖父の風景写真家、前田真三の写真ギャラリー「拓真館」があり、以前から畑や森の広がる自然豊かなこの場所で生活することを夢見ていたといいます。祖父から受け継いだ場所、日々の暮らしを確かなものにする天からの恵み。特別な贈り物に囲まれた二人が思う「ギフト」とは。セレクトした贈り物についてエピソードと共に語ります。
日常のやり取りで相手の趣味趣向が自然と入ってくる。
ギフトを贈るのは、相手について思い巡らせるところから始まります。たかはしよしこさんは、その人の好きなものを探したり、暮らしぶりを推しはかったりと、贈り物をする一連の出来事すべてを楽しめる人です。
「この人には何を贈ろうか、あの人ならこういう物を喜んでくれるのでは、と想像するのが好き。私は食回りの情報には詳しいので、贈り物はそこから選ぶことが多いです。でも好みや生活スタイルなど、相手の背景がわかっていないと贈りづらい。その人との普段の会話で、食べることが好きか、家で料理するか、家族の有無とか、自然と頭に入ってくる情報から、贈り物選びが始まります」
夫の前田景さんは反対に、選ぶのに時間がかかるタイプ。
「僕は相手の背景をなかなかうまく思い浮かべられません。よしこが普段から意識できるのは、その人の暮らしに興味があるからだと思うんです。だから相手の情報が頭に蓄積されている」
美しくておいしく、消えて無くなる魔法のフルーツ。
南国フルーツ / 紅白いちご
約10年前にいちご生産者を訪ねた際、初めて見た白いちごに感激。商品にならないのにと訝られながら頼み込んで取り寄せたことが。「白いいちごはサクサクしていて果物本来の味がする。これはサラダにいいと思いつきました。その時は農家の方からわざわざ送ってもらいましたが、今はギフトとして成立していて、感慨深いものがあります」(たかはしさん)
受け取る側の事情がわからない場合は、できるだけ迷惑にならないものを選ぶよう心がけているたかはしさん。『紅白いちご』はその代表的なアイテムです。
「いちごは大体の人が好きなフルーツ。以前、お歳暮で贈ったときに、生ものだし迷惑かもと心配していたのですが、ものすごく喜ばれました。可愛くておいしくて、あっという間に消えて無くなるのが、生ものならでは。この『紅白いちご』は華やかで、人によってはちょっと珍しいと感じてもらえます。相手がどんな生活をしているかがよくわからないけれど何かを贈らなきゃ、という時のギフトに最適です」
愛用しているからこそ、太鼓判を押すキッチン用品2種。
長谷園 / かまどさん 二合炊き
仕事柄あらゆる鍋が家にあり、炊飯のためだけにさらに買い足すつもりはなかったのに、使ってみてその素晴らしさに考えを変えました。「誰かにこれをプレゼントする時は、家でご飯を炊く人かを軽くリサーチしておくといいと思います。『お米を鍋で炊くとおいしいよ』と、普段の会話にさり気なく織り込んで、様子をみてくださいね」(たかはしさん)
料理家としての目は、ギフトにおける長谷園の『かまどさん』と、ラッセルホブスの『カフェケトル』の持つポテンシャルにも注がれました。
「この二つは私が家で使っていて、最高に気に入っているアイテム。『かまどさん』で炊いたご飯は、炊きたてはもちろん、冷めてもおいしいんです。余ったご飯をおにぎりにして翌日食べると、炊飯器で炊いたご飯は少し硬いんですが、かまどさんだとふっくらしていてみずみずしい。冷めてから違いが際立ちます」
偶然仕事で出合って惚れ込んだ炊飯用土鍋。使っている人に聞いても満足度が高く、家族や知り合いにプレゼントしてとても喜ばれた経験もあります。前田さんも「土鍋は時間がかかると誤解されがちですが、炊飯器とそう変わりません。土鍋で炊きたいけれど何を買っていいかわからない、という人にもいいと思います」と言います。
ラッセルホブス / カフェケトル 1.2L
ホーローのやかんの佇まいが好きで、東京の家ではずっと愛用していたけれど、内側にカルキがつきやすく、空焚きをしていくつも駄目にしてきました。「でもある日、男の子がこれでコーヒーを入れているのを見て、ピンときて買いました。どんな人にも受け入れやすそうなスタンダードなデザインなのも、ギフトとして最適だと思います」(たかはしさん)
一方『カフェケトル』はデザインに惹かれて手に入れたもの。「電機の製品でここまでクラシックなデザインのケトルは見たことがなく、これならと思って買いました。すると使い勝手もとてもよかったんです。北海道は水がきれいだからか、内側にカルキが付かないし。今では大満足しています」
一人暮らしを始めた人や、若い人にも喜ばれるはず、と前田さん。「驚くほど早くお湯が沸くから、お茶を入れるハードルがすごく下がります。あと、部屋でそんなに主張しないデザインなのもいいですね」二つとも実際に使って良かったものだから、自信を持って人にプレゼントできるアイテムです。
好きなもの、喜んでくれることを頭のなかにしまっておく。
ヴァルネリータ タルトゥーフィ / トリュフ 調味料セット ※こちらの商品は販売を終了致しました。
「これはグルメな人にあげたい。どこにでも売っている調味料ではないし、このサイズなのにいいお値段。自分のために買う人は少ないと思うんです。だからこそのギフト。賞味期限も生ものより長めですし、じっくり楽しめるはず」。蕪などの淡い味の野菜をシンプルにグリルして、この調味料をセットでかけると、野菜がぐんとおいしくなります。
自分では買いそうもないけれど、もらったら嬉しいというアイテムもギフトには最適。ヴェルネリータ タルトゥーフィの『トリュフ調味料セット』もその一つ。
「これはなかなか自分では買わないもの。海外旅行のお土産でいただくようなセットだと思います。でも、このオイルと塩を、卵かけご飯やポタージュスープにパラッとかけると劇的においしくなる。シンプルな料理や食材にひと手間かけるだけなので、料理をしない人にあげると喜ばれます」
贈るのも贈られるのも好きなたかはしさん。贈り方はサプライズのある方が好み。
「あげるときに事前に伝えることはありません。ちょっとしたものでもいきなり届けて驚かせたい。そのほうが嬉しいと思うから。自分でラッピングする場合は、近くの森で素敵な葉や木の実を採取して、ギフトボックスの中に一緒に詰めたりして。そうするとこちらの空気もそのまま届けられるような気がします。開けた瞬間、相手にどう伝わるかは結構考えますね」
驚かせるのが好きなのは前田さんも同じ。これまでたかはしさんの節目の誕生日には、大掛かりなサプライズを仕掛けてきました。「でもちょっとしたギフトでも喜んでもらうのは、日頃から相手の好きなものを探っている必要があります。よしこにそれができるのは、ある意味、料理を提供し、もてなす行為と近いからではないでしょうか」と前田さん。
人が好きなもの、喜んでくれることを、いくつも頭の引き出しに仕舞っているから、贈る時に料理という枠も飛び越えて取り出せるのかもしれません。「料理は誰かのために考え、作るもの。だから相手の好きなものを、自然とリサーチする癖がついているのかも。そう考えると、ギフトを選んで、届けることと、確かに似ている気がしてきました」
Photo / Kei Maeda Text / Akane Watanuki Edit / Takahiro Shibata(Kichi)
PROFILE
■たかはし よしこ
料理家、フードデザイナー。2006年に活動開始。2012年に東京・西小山にフードアトリエ「S/S/A/W」を開き、「エジプト塩食堂&デリショップ」の運営やケータリングをスタート。手作りの万能調味料「エジプト塩」をはじめ、オリジナル調味料の開発、製造を手掛けている。
S/S/A/W http://s-s-a-w.com
エジプト塩ストア https://egyptjio.stores.jp/
■前田 景
アートディレクター、写真家。1980年、東京都出身。広告代理店勤務を経て、2015年に前田真三が立ち上げた制作会社に入社。広告や書籍、webのデザインを手掛けながら、写真家としての活動をスタートさせた。2017年、初個展「WHITE ROOM」を開催。前田真三写真ギャラリー「拓真館」のリニューアルを計画中。
https://maedakei.jp/