うめひかりの昔ながらのすっぱい梅干しを贈ろう

梅文化を1000年先の未来へ
一度食べると忘れられないほど、強烈にすっぱい梅干し。
うめひかりが作る梅干しの材料は、シンプルそのもの。
材料は「梅、天日塩、紫蘇」以上。
2019年に和歌山県日高郡みなべ町で創業したうめひかりは「梅そのものの味」を引き立てることで、梅農家が誇りをもっておすすめ出来る「昔ながらのすっぱい梅干し」を作っています。
ムードマークでは、うめひかりの梅干しの販売をスタートする前に、梅農家として120年近い歩み持つ和歌山県みなべ町の梅農家で生まれ育ったうめひかりの代表・山本将史郎さんとIT企業からうめひかりに転職してきた松谷元喜さんにお話を伺ってきました。

どうしてうめひかりは「すっぱい梅干し」にこだわるのか
現在、国内で食べられている梅干しは、はちみつ梅などのように、収穫した梅を調味液に浸して味を整えたものが主流。逆に、昔ながらの梅、塩、紫蘇だけで仕込んだ「すっぱい梅干し」は、シェアが少ないのが実情です。
そんな中で、うめひかりはなぜ「梅、天日塩、紫蘇」だけで仕込む「昔ながらの梅干し」にこだわるのでしょうか?
山本さんが2019年にうめひかりを創業する前は、実家の梅農家は山本さんのお兄さんが継ぎ、梅業を営んでいました。家業を継いだお兄さんが「梅を栽培した後は、どの梅も甘い調味液で均一な味になる。正直、栽培にやりがいはない。」といった一言がきっかけで「梅本来の味が引き立つ梅干しを作って、梅農家が誇りを持って販売できる梅干しを作りたい」と本気で思うようになったと山本さん。
その当時、大学院でがんの新薬の研究を行う学生だった山本さんは、本当に美味しい梅干しを開発すべく、数十種類の梅干しレシピを試作研究し、その結果、うめひかりのシグニチャーである梅、天然塩、紫蘇だけで仕込んだ梅干し「うめひかり」が誕生したのです。

梅、天然塩、紫蘇だけで仕込んだ昔ながらのすっぱい梅干しを実際に食べた人は「すっぱい!でも、懐かしい味。昔食べていた梅干しの味を思い出した」といって、梅本来の味わいが広がるうめひかりの梅干しに魅了される人が続出したといいます。
「うめひかりの梅干しは、本当にリピーターが多いんです。自社サイトのリピート率を調べたら、66%を越えていました。複数回梅干しを注文してくださる方も多くて、みなさん梅に対する熱量が本当に高いんですよ」とIT業界からうめひかりに転職してきた松谷さん。

収穫した梅は敷地内の施設で天日干しする
季節によって天日干しの時間を変え、一番美味しい状態に向けて整えていく
梅は熟成させる|半年間樽で眠らせた梅干しの美味しさ


うめひかりでは、天日干しした後の梅干しを樽に入れて熟成させます。この熟成期間を置くことで、梅と塩がじっくり馴染んで、まろやかな塩味が広がるようになります。最短半年程は樽の中で熟成させているといいます。
うめひかりで一番美味しい熟成期間は、3年!という持論があるため、通常の梅干しだけでなく【無添加】三年熟成梅干しという、3年熟成させた梅干しも販売しています。
熟成させた梅干しは、その酸っぱさに思わず顔がくしゃっとなるのですが、その後に梅本来の香りやみずみずしい果肉が味わえる、一度食べると忘れられない魅力があります。
梅業界が変わるためには
さて、うめひかりに熱量の高いファンがいることは、一つのファクトではあるものの、梅自体の消費量が年々減少する中、うめひかりが展開するブランド「梅ボーイズ」のリーダー・山本将史郎さんは、梅業界そのものが変わっていく必要性、そして、梅業界の未来の在り方について語ってくださいました。
梅業界を守っていくためには、梅文化を継承していくことが大切だという山本さん。そのためには、3つの柱があるといいます。


梅業界がこれからも梅文化を守っていくために必要なこと。その一つ目は、一次産業から梅業界を元気にしたいということです。
「今、一次産業に元気がないですよね。僕自身、田舎が好きなのですが、田舎では一次産業が成り立たないと、暮らしが成り立たない部分があります。そのために一次産業である梅農家として取り組みたいのは、梅文化を継承していくだけでなく、新しい世代に向けて梅文化を発信していくことなのではないかと思っています。
正直、今の若い世代には梅と塩と紫蘇だけで仕込んだ梅干しを、そもそも食べたことのない人が多いんですね。だから、まず昔ながらの梅干しを食べてもらうことが最初の一歩だと思います。
お米自体の消費量も減っているから、料理に入れたり、お酒と一緒に楽しんだりと、まず最初の一粒を食べてもらって、梅の食文化事態を次の世代に継承していくことが、一次産業が元気でいるたに必要なことなのかなと考えながら活動しています。
二つ目は、梅に関する技術の継承です。当たり前に聞こえるかもしれませんが『梅干し作り』の技術も継承していかなくてはいけない技術の一つです。
梅は果樹なので、新規就農しても、最初に梅が採れるようになるまで7年くらいかかるんです。植えてから7年間も収入がないのは辛いですよね。だからこそ、梅農家を継ぐ世代がいないと、その梅農園はそこで終わってしまうんです。だから、実家が梅農家じゃなくても、就農出来る仕組みを作って、農園を繋いでいきたいと思っています。
新規就農者を受け入れて、担い手のいない農地もどんどん借りて、新規就農者でも農園長になれる仕組みを作っていきたいです。やっぱり、農園長になってこそ、やりがいも面白味も感じられると思うので。


うめひかりの敷地内にある梅農園
季節ごとに様々な手入れをしながら梅の木を育てていく
そして、梅文化を継承していくにあたり、大切な3つ目の柱は、梅が育つ環境を繋いでいくことだといいます。
和歌山では南高梅が出来るようになってから、至るところに梅を植えてきた土地でもあります。ご存じの通り、和歌山は山の斜面が多い土地なんです。それでも、南高梅の栽培に適した気候だったこともあり、ありとあらゆるところに梅を植えてきましたし、山を畑に開墾して梅を植えてきた歴史があります。ただ、梅の消費量が低下するにつれて、耕作放棄されている土地が増えてきているのも事実です。
耕作放棄された土地が増えてくると、その土地にやってきた害虫の繁殖の温床になってしまうことも懸念されます。また、耕作放棄された土地が増えると、山も環境が悪化しがちです。
そもそも、山が健やかにそだって、豊かな水が生まれて、その土地と水から美味しい梅が育つという循環がありますよね。だから、美味しい梅を作り続けていくためには、山の環境を整えていく活動は欠かせないものだと思っています。
ただ、このあたりの土地は山の斜面を切り開いた場所も多く、梅以外の何かを植えて立て直すことが難しい現実もあります。
山の環境を整えるため耕作放棄の土地で植樹事業を展開
そこで、うめひかりでは、もともと和歌山の山に植わっていた紀州備長炭の原料でもある「ウバメガシ」を植樹して、山に戻していく活動をはじめました。
「うめひかりの植樹事業は、ボランティアとして取り組んでいる訳ではなく、紀州備長炭を作ることで収益が上がる一つの事業として取り組んでいます。
植樹事業には本腰を入れて取り組んでいて、まずは植樹する苗木を育てるために『ドングリーグ』と名付けたイベントで、ウバメガシのどんぐりを拾うイベントを開催しました。
30人で約15,000粒のどんぐりを拾って、今がうめひかりの敷地内で苗木になるまで育てているところです。
ウバメガシを植樹することにした理由は、もともとこの土地に植わっていた植物ということもありますが、木を切ってもまたそこから木が再生する利点があったからです。
50年育てた木を伐採して、また植樹するとなると、そこでも費用が必要になりますよね。でも、ウバメガシなら、伐採したところから自然と木が再生するので、再度植樹する必要がありません。
一度植樹したら、半永久的に山として在り続けてくれる。そんな力のある木なので、20年くらいのスパンで考える事業ではありますが、林業経営に本気で取り組んでいます。
一次産業で得た利益を、次世代を育てていくこと、そして梅文化を守るための環境を整えていくことに投資していきたいです。自分たちの代で終わり、ということにはしたくないので。

ドングリーグで集めたどんぐりは2〜3年程度の期間うめひかりの敷地内で育ててから山に植樹する
梅仕事は熱い!一度踏み入れたら抜け出せない梅の魅力

うめひかりでは、梅ボーイズ宣言という宣言をしています。
梅ボーイズ宣言
1.添加物は使わずに、塩だけ、塩と紫蘇だけで梅干しを作ります。
2.梅そのものの美味しさ、素晴らしさを伝えることで、本来の梅干しを後世に残します。
梅ボーイズの宣言には、梅そのものの味わいが楽しめる梅干しを作るだけでなく、梅本来の美味しさや梅文化を梅干しを通じて未来に届けていきたいという思いが込められています。
これからの梅文化をどんな人たちと作っていきたいか、山本さんに聞いてみました。
「一緒に働くなら…正直な人がいいですね。私利私欲にまみれた人には、私たちの描く梅業界を作る仲間にはなれないと思うので。厳しい時もあるかもしれませんが、本気で梅業界を変えていきたいと願う仲間と一緒に働きたいです」と山本さん。
本気で梅業界を変えていきたい。もっと美味しい梅干しをたくさんの人に味わってもらいたい!という思いが伝わってくると共に、これだけの熱量のある人たちなら、これからの梅業界をきっと切り拓いていくのだろうなと感じた言葉でした。




Photo / Ayumi Yamamoto